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いまさら聞けないオトナの敬語 「申し訳・・・・」

「申し訳ございません」という言葉。私は敬語として頻繁に使っています。本当にそそっかしく、未熟さゆえにお詫びすることが多いからです。その敬語が、ゆらいでいるのをご存じでしょうか?

ある企業の研修で、Aさんに質問を受けました。
『先ほど「とんでもない」を「とんでもございません」と言うのは誤用だと教わりましたが、「申し訳ございません」はいいのですか?』と。なかなか鋭いご指摘でした。
テレビ番組で「申し訳ない」を「申し訳ございません」とする敬語は誤用である。と言っていたらしいのです。テレビがいうから正しい。と思えるほど素直でない私です。結果から言えば「使ってもいいのでは」と伝えました。

前述の「とんでもございません」は、接客業では頻繁に使われますが、とんでも「ない」の部分だけ敬語にするのは誤用です。「とんでもない」という形容以外の表現がなく、ひとくくりでようやくその意味がわかります。
「とんでもない、私はよかれと思ってしたことです」
「礼なんて、とんでもない(こと)です。当たり前のことをしただけですよ」
相手の話を聞いて否定するときや、思いもかけないことを言われたときに、打ち消す意味で使います。「途(と)でもない」から転じているので、「・・ない」だけ変えずに、丁寧な敬語では「とんでもない(ことでございます)」となります。

そして敬語として間違いだと言われた「申し訳ございません」は、専門家の中では多少意見が分かれるものの誤用とは言えません。それは、「申し訳」だけでも意味をなすからです。広辞苑など辞書では「申し訳」は、弁解、言い訳、体裁だけ。の意味。とあります。
「申し訳のしようもないです」
「申し訳程度の謝礼金だ」
「申し訳が立ちません」
「申し訳ありません(ございません)」辞書にも例文があることからも「申し訳ありません」や「申し訳ございません」は誤用でないとお伝えしています。むしろ「申し訳ないです」では同僚なら問題なくても、目上の方にはやや軽いと受け止められるかもしれません。さらに「申し訳なく存じます」では、丁重ですが、古めかしく、お詫びの気持ちが伝わりにくいのではないでしょうか。

印象のよい人にとって、敬語は技のようなもの。敬語という技を身に着けると、相手とのコミュニケーションに役立つのはもちろんです。でも私自身が使い続けてきて、どうやら言葉もファッション同様に足したり、引いたりという「センス」が必要だとわかりました。場の雰囲気や、相手の言葉遣いに応じて、敬語を知りつつも時にはカジュアルな今どき言葉も使いこなせたら、かっこいいですね。