忘れない「おもてなし」
大震災から3年が過ぎました。
東日本大震災犠牲者の方々に謹んで哀悼の意を捧げます。
都内でもあの日はいろんなことがおこっていました。
私は、帰宅難民になっていました。
ちょうどホテルのレストランにいた時に、地震があり、ホテルの従業員も「この建物は耐震構造ですから」と落ち着いた対応でした。
よく接客やサービスの本には、ホテルのホスピタリティーについて書かれています。だから、非常事態にこの場所にいたことは、むしろありがたい、とも思っていました。
スタッフは「マニュアルに沿って指示があれば食料も出します」と、不安げな友人にも、ねぎらいの言葉をかけてくれ、彼女も「さすがね。ホテルにいた時でよかった」と感心しきりでした。
しかし、夜になり閉店時になると、あっさり退席を促され「せめてロビー前にいても?」とお願いしてみましたが「ロビーは宿泊のお客様のみになっております」と返答されました。しょせんはレストランだけの客です。究極のホスピタリティーをうけるのは、安くないことを知りました。
その後、夜も更けていき「ビルの外に出ないといけなくなったら・・・」と不安になっていた時、向こう側ので手招きしている男性がいるのです。
「千疋屋」というその店は、すでに閉店していましたが、就活生や勤め帰りの人、老夫婦など大勢の帰宅困難者を見つけては招き入れていたのです。「椅子もっと使って寝ていいから」という声に恐縮していると、私服の女性が、温かい食事とお水をそっとさりげなく置いていきます。
自分たちも帰宅できない中、客でもない人間に、こんなに温かいもてなしができるなんて・・・。大切なことを学んだ夜でした。
かくして落ち着いた頃。その店にお礼に伺いました。もちろん今度は「客」として。その後も利用させていただき、友人には口コミでおすすめをしています。
私も仕事がら、接客やサービスの「マニュアル」作成のお手伝いをしていましたが、あの日以来「マニュアル」や「クレド」を順守させ携帯することよりも、いざという時は良心にそって「さっと手を差し伸べる。」 そんな「もてなしのこころ」を携帯しておきたいと思いました。